The Society of OSARAGI Jiro
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 ●「秘密結社の時代」カバー

 ●苦楽社版「御用盗聞」
 絵=鰭崎英朋  
 1948年(昭和23)

 ●中央公論社「鞍馬天狗」  
 イラストレーション=横尾忠則
 1969年(昭和44年)

 ●朝日新聞社版文庫表紙
 イラストレーション=ペーター佐藤
  1981年(昭和56)    

『秘密結社の時代――鞍馬天狗で読み解く百年』


斬新な視点から論じられた鞍馬天狗
 大佛次郎の時代小説にはしばしば秘密結社が登場する。本書では、内外の秘密結社に関する著書を何冊か手がけた海野弘が、鞍馬天狗シリーズを幕末の結社の物語として読み解きながら鞍馬天狗とは何者かを考察し、併せて大佛次郎が「天皇の世紀」を執筆するに到る道筋を明らかにする。秘密結社とは、歴史的にみて体制が揺らぐ危機の時代にあらわれて暗躍するが、その結社と対決する鞍馬天狗自身もまた秘密結社的存在であったという指摘には納得ができる。

[内容]

・ プロローグ 鞍馬天狗の謎
・ 第一章 鞍馬天狗の四つの時代
・ 第二章 鞍馬天狗で秘密結社を解く
・ 第三章 戦後の鞍馬天狗
・ 第四章 『天皇の世紀』〜秘密結社をめぐる旅
・ エピローグ 横浜天狗ロマン周遊

 著者は1920年代の社会主義的傾向、政治・経済的混乱の中の漠然として気分が、おびただしい明治維新に関する研究本を生み、鞍馬天狗はその霧を切り裂いて登場したことを指摘したあと、「小鳥を飼う武士」「山嶽党奇談」「天狗回状」などなど、ほぼ全部の作品を当たりながら、大佛が描いた秘密結社の世界へと読者を導いていく。
 なお、幕末の江戸では浪士の徒党があり、盗賊の一味があるが、それとは違う結社もあったという指摘は興味深い。趣味、道楽、遊芸などの会も一種の秘密結社であって、鞍馬天狗余燼に出てくる俳句の会、新門辰五郎率いる町火消し、あるいはまたサンカやエタなど、天狗シリーズや大佛の時代小説でお馴染みの組織も同様だと述べる。なお、山嶽党奇談」に登場する白髪の老人は、イスラムの暗殺集団「アサシン」のイメージを借りたこと、骸骨の模様が入った服を着た不気味な集団はアメリカの「クー・クラックス・クラン」などからヒントを得ているのではないかと述べるくだりもおもしろい。[DK]

判型・定価など

四六版 214頁
定価=1300円(税別)
河出書房新社

 

 

 

 

 

 

 

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