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新潮文庫版『赤穂浪士』。装画=西のぼる


『赤穂浪士』(上下)大きな活字で復刊

この作品は昭和 2 年( 1927 年) 5 月 14 日より同 3 年 11 月 6 日まで『東京日日新聞』に連載、 同 3 年に三巻本として改造社より出版されたものだが、今回、新潮文庫から大きな活字による新組みで久々に復刊され た。

『赤穂浪士』は、元禄 15 年( 1702 年)に実際に起こった事件を題材にして小説化されたものであるが、古くから歌 舞伎・文楽の演目「仮名手本忠臣蔵」、あるいは映画・テレビにおける「赤穂義士」として日本人に親しまれてきた。

なお、日本人にとっては馴染みの深い題材を取り上げるに当たって、大佛次郎は次のように回想している。

「これだけ大きい舞台を提供してくれた新聞も新聞だが、忠臣蔵と注文されて私もやりにくかった。忠臣蔵や大石内蔵 助は、当時までの日本人には、忠義の精髄と無条件で信じられていることだった。新しくそれを書く。これは既成の観 念の前に脱帽するだけでは無意味のことで、苦労してまでくりかえして書くことではない。書くのなら私のものにしな ければならない」(「赤穂浪士」、『今日の雪』光風社書店)。

こうした理由から、著者は赤穂事件を独自の視点で読み替えた。つまり忠義の精神に則って主君の仇を討つ大石内蔵助 を、幕藩体制に抗議する批判者として描いたのである。そしてそれを実践するに当たって、浪人・堀田隼人と盗賊・蜘 蛛の陣十郎という人物を新たに造形し、事件に接触しながら事件の外にいる、つまり「見る人間」として事件を批評す る立場に置きつつ、見事に忠君愛国的な時代を批判したのであった。

文庫版のコピーに謳われているように、昭和の読者を魅了した忠臣蔵小説の最高峰であり、 「 人生で二度読む」に値 する傑作である。

 

『 赤穂浪士』新潮文庫
上巻= 696 頁 下巻= 707 頁 共に 857 円+税

 

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