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●鞍馬天狗傑作選。装画=村上豊


@『角兵衛獅子』+ A『山嶽党奇談』+B『鬼面の老女』

文藝春秋から新書版として刊行された「鞍馬天狗傑作選」(全三巻)がこのたび完結した。

 

@『 角兵衛獅子』( 349 頁) 1429 円+税

〈鞍馬天狗シリーズ〉の中で、もっとも有名な作品。博文館の雑誌『ポケット』に鞍馬天狗物が初登場したのち、いくつかの続編が書き継がれたが、当時『少年倶楽部』の編集長加藤謙一に懇願されて連載(昭和2年3月号から3年5月号)を始めたのがこの作品である。ここで初めて登場した杉作は盗賊黒姫の吉兵衛とともに物語に彩りを添え、その活躍振りは少年読者を熱狂させた。その後、アラカンこと嵐寛寿郎の鞍馬天狗、美空ひばりの杉作の組み合わせで映画となり、これまた大人気を博す。なお、鞍馬天狗と近藤勇が東寺の五重塔で行なう決闘シーンは、数ある時代劇のなかでも名場面として忘れ難い。

A『 山嶽党奇談』( 483 頁) 1714 円+税

「角兵衛獅子」に続いて『少年倶楽部』に連載された長編小説(昭和3年7月号から5年12月号)。こちらも杉作少年や黒姫の吉兵衛が活躍する。白髪鬼と呼ばれる不気味な老人を首領とする暗殺集団「山嶽党」は、鞍馬天狗を仲間に引き入れようとして失敗するや、次々と攻撃を仕掛ける。これに宿敵近藤勇率いる新選組や京都所司代、また鞍馬天狗を陰から応援する西郷隆盛などが絡んで盛り上がりを見せる。秘密の地下道や合い言葉、謎の絵図といった伝奇小説的な仕掛けは、大佛次郎初期の傑作時代小説『照る日くもる日』を彷彿とさせ、読者をグイグイと引き込こんでゆく。

B 『 鬼面の老女』( 472 頁) 1714 円+税

記念すべき鞍馬天狗の最初の作品が「鬼面の老女」。七五調による文体、常套的表現の多用は、文芸評論家・山本健吉も指摘するように立川文庫を連想させる。のちの〈天狗シリーズ〉と比較して読めば興味は尽きない。戦後に刊行された中央公論社版『決定版鞍馬天狗』(全 12 巻)に収録されていた第二話「銀煙管」から第八話「香りの秘密」までの作品は、その後同社で出版された十巻本では概要のみが収録され、目にする機会も少なかった。今回はこれらの作品も収録され、最初期の鞍馬天狗を知る絶好の機会。なお、シリーズ中の傑作「雪の雲母坂」も併せて収録。

 

 

 

 

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