The Society of OSARAGI Jiro
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● 左より『白い姉』『いきてゐる秀頼』『灰燼・露草』


『白い姉』+『灰燼・露草』+『生きてゐる秀頼』

 好評のうちに迎えられた〈大佛次郎セレクション〉(全6巻。未知谷)は、最初の2巻に続いて5巻まで配本され、順調な売れ行きを伸ばしている

なお、3巻から5巻までのタイトルと収録作品は以下のとおり。

「白い姉」は作家が小説を書き始めて最初の現代小説で、 1931 年(昭和 6 年)新聞に連載されたもの。主人公佐保子の健康な肉体と表情はまるで西洋人そのもので、当時世界的に流行したモダンガールを先取りしている。ラグビー選手のボーイフレンド、クーペ型の自動車、元町やニューグランドホテルでの食事やダンス……。至る所にちりばめられた最先端のモードが眩しく彼女をいろどるさまは新鮮。二十世紀文学の名に値する隠れた名作。

「灰燼」以下の3作品は時代小説であるが、現在、入手困難な作品ばかり。

「灰燼」は 1938 年(昭和 13 年)に雑誌に連載が始まり、「露草」は 46 年(同 21 年)に地方紙に連載されたもので、二作とも明治初頭の横浜が舞台となっているが、ともに幕藩体制瓦解後の虚脱したような人物が描かれる点で共通している。作中人物たちに見られる喪失感は、太平洋戦争によって茫然自失した日本国民と酷似し、敗戦による虚脱を予感していたかのようでもある。

「生きてゐる秀頼」 1937 年(昭和 12 年)に『週刊朝日』に連載されたもので、「豊臣秀頼が大坂城落城の時に密かに脱出、九州に落ちのびた」という伝説を元に執筆した。この伝説は平戸のイギリス人リチャード・コックスの日記にも紹介されている有名なもので、大佛はこの話は昔から好きだったと記している。のちに『月の人』、それを改題した『月から来た人』のプロトタイプと言ってもよい作品。恋あり、友情あり、冒険ありのエンターテイメント小説であるが、娯楽に徹した伝奇小説の傑作といえよう。

*発行=未知谷 TEL 03-5281-3751

● 『白い姉』( 302頁) 『灰燼・露草』( 358頁) 『生きてゐる秀頼』( 318頁)

「白い姉」2800 円+税   「灰燼」「露草」3200 円+税  「生きてゐる秀頼」 2800 円+税

 

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