The Society of OSARAGI Jiro
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大佛次郎セレクション刊行始まる

 大佛の主要作品は「時代小説全集」( 24 巻)、「自選集現代小説」( 10 巻)、「ノンフィクション全集」( 5 巻)を始め、これに『天皇の世紀』( 10 巻。文庫版は 17 巻。以上すべて朝日新聞社刊)とエッセイ集(単行本およびアンソロジー)を加えれば、その全貌はほぼ網羅されていると見て間違いないだろう。だが、全集を編集するに際し、重要作品が相当数収録されなかったことは、よく知られるとおりである。もちろん、物理的制約があったであろうことは容易に想像できるが、厳密主義で鳴らす大佛のことゆえ、厳しい選択眼が働いたこともまた事実であろう。

 このような状況のもと、待望久しい〈大佛次郎セレクション〉(全6巻)が刊行を開始されたことは喜ばしい限りである。初回配本は2冊同時で、本のタイトルと収録作品は以下のとおり。

●『 白い夜』
「白い夜」「レスナー館」「愛情」「離合」

●『 姉』
「姉」「新樹」「熱風」「女人高野」

 古書店等でも入手困難な作品ばかりであるが、日中戦争が本格化し始めた 30 年代横浜を舞台にした「白い夜」、明治の横浜を舞台にした「レスナー館」は大佛作品を形成するジャンルのひとつ、「横浜物」を愛する読者には必読といえよう。

 また、終戦直後の世相を描いた「姉」は、先頃刊行された『終戦日記』を知る読者なら、敗戦による混乱からいまだ立ち直れない時代を大佛がどう見ていたかがわかり、興趣は尽きない。

 なお、ここに収録された「新樹」は、『東京新聞』に連載された(光風社から単行本として刊行、また上記「自選現代小説」に収録)同名作品とは異なるもので、昭和 14 年( 1939 年)に『週刊朝日』に連載された別の作品である。

 全巻の編集と解説は、長らく大佛の謦咳に接し、『パリ燃ゆ』執筆時にはフランス語文献・資料整理に尽力した村上光彦(大佛次郎研究会会長)。稀代の読み巧者によるこのセレクションの続刊が待たれるゆえんでもある。

●『 白い夜』( 268 頁)+『姉』( 270 頁)。


いずれも、2500 円+税 未知谷  200 7年 9 月 10 日巻数表記はなし

 

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